物件を見る時、多くの人は利回りや家賃収入に目がいきます。
でも、利回りが高いという理由だけで「買っていい物件」とは言えません。家賃が入らない、修繕費が重い、金融機関の評価が伸びない、自分では管理しきれない。表面利回りに出ない部分で苦しくなるからです。
この記事では、初心者が物件資料を見たときに、収益力・担保力・稼働力・自分との相性の4つで「詳しく調べる物件」と「見送る物件」を分けられるようにします。
先に私の考えを言うと、まず外せないのは人口が流入している県・市町村か、今後も賃貸需要を見込める生活圏かです。今なら都心そのものにこだわるより、通勤・通学先へアクセスしやすいベッドタウンのほうが、価格と需要のバランスを取りやすい場合があります。

最初の5分で確認すること
物件資料を開いたら、最初に次の5つを見ます。
- どの市町村・駅・生活圏にあるか
- 誰が、なぜこの部屋を借りるのか
- 現在の家賃と入居状況は現実的か
- 経費と返済を引いてもお金が残るか
- 売るときに、次の買い手が見つかりそうか
この時点で「誰が住むのか」を説明できなければ、利回り計算へ進む前に賃貸需要を調べます。
1.収益力:空室と修繕を入れても残るか

収益力は、家賃収入から経費、税金、保険、管理、修繕、ローン返済を引いてもお金が残るかで見ます。
ここが弱い物件は、どれだけ見た目の利回りが高くても危険です。
最低でも次の3パターンを作ってください。
| 想定 | 確認すること |
|---|---|
| 通常 | 現在の家賃と入居状況で毎月いくら残るか |
| 悪化 | 空室・家賃下落・修繕が重なっても耐えられるか |
| 金利上昇 | 返済額が増えても家計から持ち出さずに済むか |
売主や不動産会社のシミュレーションが満室前提なら、その数字を答えにしないことです。現在の入居者が退去した後も、同じ家賃で決まるのかを周辺募集と比べます。
2.担保力:金融機関と次の買い手からどう見えるか
金融機関は、家賃収入だけでなく、土地・建物・築年数・構造・エリアなどを見て物件を評価します。評価方法は金融機関によって違うため、売値と同じ評価が出るとは限りません。
ここで読者が見るべきなのは、「この物件を次の人も融資を使って買えるか」です。出口で買い手の融資が付きにくい物件は、売りたいときに価格を下げる必要が出るかもしれません。
- 土地の価値に対して価格が高すぎないか
- 建物の残りの使用期間をどう考えるか
- 違法・未登記・再建築など、融資の障害になる要素がないか
- 周辺で同種の物件が売買されているか
- 売却時に個人だけでなく法人も検討できる物件か
分からない項目は、仲介会社の説明だけで決めず、金融機関、管理会社、必要に応じて専門家へ確認します。
3.稼働力:今満室かではなく、次も決まるか

不動産は「人=お金」です。
現在満室でも、相場より安い家賃で長期入居しているだけかもしれません。大切なのは、退去後に募集したときも入居が決まるかです。
私は、人口の総数だけでなく、県と市町村の人口流入、世帯数、駅の利用、勤務先・学校・病院・商業施設への動線を見ます。転入・転出は政府統計e-Statの住民基本台帳人口移動報告、人口の増減や将来推計はRESASの人口マップで確認できます。特に一棟物件は、駅を使う地域なら駅近を優先します。
現地では次を確認します。
- 最寄り駅・職場・学校・買い物先まで実際に歩く
- 朝と夜の人通り、明るさ、騒音、においを見る
- 同じ間取り・家賃帯の募集件数と掲載期間を見る
- 管理会社へ、決まりやすい間取りと家賃を聞く
- 入居者を単身・ファミリー・学生など具体的に想定する
人口が減っていても局所的に需要がある場所はあります。逆に人口が増えていても、供給過多なら空室競争になります。統計と現地の両方で見てください。
4.物件戦略:自分の資金と運営力に合うか
私は、資金が少なければ戸建、中程度なら一棟アパート、十分あるならRC一棟を検討する考えです。ワンルーム区分は管理の手軽さはありますが、私自身は積極的には推していません。
ただし、資金だけで決めるものでもありません。
| 物件 | 主な特徴 | 購入前に考えること |
|---|---|---|
| 戸建 | 少ない資金から工夫しやすい | 空室中は家賃がゼロ、修繕を自分で判断できるか |
| 一棟アパート | 複数戸で空室を分散しやすい | 駅・生活圏の需要、外壁・屋根など一棟修繕 |
| RC一棟 | 規模を取りやすい | 価格、税金、大規模修繕、設備維持の負担 |
| 区分マンション | 管理を任せやすい | 管理費・修繕積立金、1室空室の影響、売却価格 |
RC一棟では、私はエレベーターなしの物件を優先的に見ます。エレベーターは利便性がある一方、点検・修繕・更新という固定負担になるからです。ただし階数や入居者層によっては必要なので、一律ではなく家賃と入居率への効果まで見ます。
買付前の物件判断シート
次の項目を、○・△・×で埋めてください。
- [ ] 通常・悪化・金利上昇の3パターンで収支が分かる
- [ ] 退去後の募集家賃を周辺物件と比較した
- [ ] 想定入居者と、その人が住む理由を説明できる
- [ ] 市町村の人口・世帯・生活動線を確認した
- [ ] 現地を歩き、昼夜の違いを見た
- [ ] 修繕履歴と、今後必要な工事を確認した
- [ ] 金融機関から見た評価の弱点を確認した
- [ ] 自己資金を出しても生活防衛資金と予備費が残る
- [ ] 管理会社へ賃貸需要と募集条件を聞いた
- [ ] 売る場合の買い手と売却条件を想定した
×があるから即不合格ではありません。ただし、×の理由と対策を説明できないまま買付を出すのは止めます。
私なら見送る条件
- 高利回りの理由が、空室・修繕・立地の弱さで説明できてしまう
- 現在の家賃が周辺相場より明らかに高く、退去後に維持しにくい
- 人口や世帯が減り、需要を支える勤務先・学校・交通も弱い
- 大きな修繕が近いのに、費用を収支へ入れていない
- 自己資金を使うと、家計と物件の予備費が残らない
- 出口を「誰かが同じ価格で買ってくれるはず」で考えている
- 不明点を質問しても、急かすだけで資料や根拠が出てこない
まとめ:買っていい物件は、4つの弱点を説明できる物件
完璧な物件はありません。だから「弱点がない物件」を探すのではなく、収益力・担保力・稼働力・自分との相性の弱点を把握し、それでも持ち続けられるかで判断します。
今日やることは、気になっている物件を1つだけ選び、判断シートを○・△・×で埋めることです。空欄があれば、買付より先に確認します。
不動産は「運用商品」ではなく、買った後も管理する事業です。利回りだけでなく、入居者・金融機関・次の買い手・自分の4方向から見てください。
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※本記事は不動産賃貸業を学ぶための一般的な考え方です。特定の物件購入・利益・融資承認を保証するものではありません。税金・契約・融資は最新情報を確認し、必要に応じて専門家へ相談してください。


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