2026年2月、私は美容・リラクゼーション系のフランチャイズ店舗をオープンしました。
そして2026年8月31日、約7か月で閉店しました。
この間の新規客は約200人、延べ来店客数は約300人。最高月商は約100万円です。お客さんが一人も来なかった店ではありません。
それでも、事業として続けることはできませんでした。
結論から言うと、私が失敗したのは「集客方法を知らなかったから」だけではありません。
売上を作ることと、持続可能な事業を作ることは、全く別物でした。
失敗の原因をたどると、その多くは開店後ではなく、加盟、資金、物件、契約、採用という事業の「入口」で起きていました。
この記事は特定のFC本部や従業員を批判するものではありません。店舗名、地域、人物は特定できない形にし、私自身がどこで判断を誤ったかに絞って書きます。記載する数値は当時の自店舗の記録に基づきます。
数字で見ると、「お客さんが来なかった」ではない
当時の売上管理記録は次のとおりです。
| 月 | 売上 | 客数 | 新規 | 再来 | 客単価 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2月 | 310,850円 | 32人 | 32人 | 0人 | 9,714円 |
| 3月 | 463,100円 | 43人 | 38人 | 5人 | 10,770円 |
| 4月 | 1,002,000円 | 59人 | 51人 | 8人 | 16,983円 |
| 5月 | 434,350円 | 54人 | 30人 | 24人 | 8,044円 |
| 6月 | 251,900円 | 38人 | 22人 | 16人 | 6,629円 |
| 7月 | 440,150円 | 37人 | 17人 | 20人 | 11,896円 |
| 8月 | 128,400円 | 35人 | 9人 | 26人 | 3,669円 |
| 合計 | 3,030,750円 | 298人 | 199人 | 99人 | 10,170円 |
月別表を合計すると、延べ来店客数298人、新規199人です。別に残していた全体集計(延べ299人・新規200人)と1人差があるため、本文では「約200人」「約300人」と表現します。
特に大きな変化があったのは4月から5月です。
4月は59人で100万2,000円、5月は54人で43万4,350円。客数は5人しか減っていないのに、売上は約57万円下がりました。
理由は、客数だけではありません。
4月の売上内訳は、施術売上約38万6,100円、店販約61万9,100円。この店販のほとんどは回数券でした。5月は施術売上約25万5,200円、店販約18万2,000円です。
ここで初めて、この事業が単に「施術して満足してもらえば続く」モデルではないことが、数字として表れました。
新規集客 → 施術 → 提案 → 回数券販売 → 再来
ここまで安定して回して、初めて計画した売上に近づくモデルでした。施術スキルだけでなく、スタッフの提案・販売スキルと継続性に売上が強く左右されます。
回数券は、売った月の現金と売上を作る一方で、将来の施術義務も生みます。月商だけを見ていたら、本当の収益性を誤解します。
私は「事業をやる理由」を探していた
私は以前から、自分で事業を持ちたいと思っていました。
コンサルティングで業務改善、スタッフマネジメント、研修に関わり、一定の成果も出していました。不動産投資や株式投資では、数字や悪いケースを確認してから判断します。
だからこそ、「完全な未経験者よりは、自分ならできるのではないか」という自信がありました。
2025年8月、独立・開業案件を通じて美容・リラクゼーション系FCを知ります。本部にノウハウがあり、既存店には実績がある。そこに自分の経験を組み合わせれば、成功確率を上げられると考えました。
人生の節目も重なり、「何か行動したい」という気持ちが強くなっていました。
一つひとつは悪いことではありません。ただ、それらが重なり、私は「この事業をやるべきか」ではなく、「この事業をやる理由」を探していたのだと思います。
情熱、成功事例、自分への自信、人生の節目。全てが加盟する方向へ私を押しました。その一方で、「やらない理由」を本気で探していませんでした。
分析できなかったのではない。分析する責任を預けてしまった
今回の失敗で、自分が最も反省しているのはここです。
不動産なら、家賃、空室、金利、修繕、キャッシュフロー、売却価格まで確認します。
株式なら、売上、利益率、成長性、財務、割高・割安、下落リスクを見ます。
コンサルでは、問題を分解し、仮説を立て、数字を見て改善します。
それなのに、今回は十分にやりませんでした。
理由は、私がFC本部を「答えを持っているメンター」のように見ていたからです。
本部が成功パターンを持っている。物件、採用、研修、集客、運営を教えてくれる。ならば、自分はその型に素直に乗った方がいい。
結果として、「本部が分析した正解を持っており、自分は実行すればいい」と考えてしまいました。
ただし、本部にノウハウがあることと、自分の店舗が成立することは別です。
地域、家賃、採用できる人材、スタッフの提案力、オーナーが現場に入るか、広告効率、資金力。条件が違えば、同じ型でも結果は変わります。
本部は「答えを持つ先生」ではなく、判断に必要な情報源の一つと見るべきでした。
ノウハウは借りても、投資判断まで預けてはいけない。私は分析できなかったのではなく、分析する責任まで本部に預けてしまったのです。
最初から「融資ありき」で考えたこと自体がズレていた
今回は約1000万円規模の資金を動かす計画になりました。その前提に強く影響したのが、FC本部からの説明と募集資料です。
物件取得費、内装工事、設備、備品、広告、加盟、研修などを積み上げた開業モデルを見て、私は「この事業を始めるなら、このくらいの資金は必要だ」と思い込みました。
本来、最初に考えるべきだったのは、「いくら借りられるか」ではありません。
「いくらなら失敗しても生き残れるか」でした。

融資の申込みには、物件や事業計画を具体化する必要がありました。
FC加盟 → 物件を決める → 融資を申し込む → 融資が決る → 契約 → 採用・工事
手続きを一つ進めるたびに、使ったお金と関係者が増えます。「ここまで来たのだから進めよう」と考えやすくなり、やめる選択肢を取りにくくなりました。
融資が通ったことは、資金調達の審査を通過したことです。その地域で、その人員で、その売上構造が継続的に成立すると証明されたわけではありません。
私は、「融資を受けるための計画」と「投資を続行するか判断する計画」を分けられていませんでした。
良い事業計画とは、最短距離で開業できる計画ではありません。条件が崩れたら「止める」「戻る」「別の案を選ぶ」というボールを、経営者が持ち続けられる計画です。
契約前に強く交渉しないと、開業後には変えにくい
物件の契約前、私も賃料の交渉はしました。しかし、難しいと言われ、それ以上は踏み込みませんでした。
閉店後、次の利用候補者の交渉過程を見る機会がありました。そこでは賃料、初期費用、フリーレントなどで、私よりも有利な条件が提示されていました。
そこで分かったのは、「一度断られたら交渉終了」ではなかったことです。
契約前は、こちらに「契約しない」という最大の選択肢があります。一旦契約すれば、家賃は毎月出ていきます。
「この家賃では損益分岐点を超えられない」「この開業日に間に合わないなら契約しない」と、条件と撤退線を先に決めるべきでした。
採用で見るべきは、施術力だけではなかった
この店舗の仕事は、施術だけで完結しません。お客さんの状態を聞き、プランを提案し、継続利用の価値を説明することも仕事でした。
しかし、私自身が加盟前に売上構造を十分に理解していなかったため、採用時に求める仕事と基準を明確に伝えられていませんでした。
入社後に「提案も必要」「数字も追う」と要求水準を上げれば、従業員側から見ると「話が違う」と感じるのも無理はありません。
私が学んだのは、「最初は従業員に厳しく接しろ」ということではありません。
最初から、仕事の範囲と判断基準を曖昧にしない。
威圧や人格否定は不要です。労働条件と尊厳を守るのは当然です。そのうえで、提案や販売も職務なら、採用前からそう説明し、本人の意思と適性を確認する必要がありました。
伸びたあとで役割や目標を追加するより、最初に基準を明確にし、成果が出たら給与、インセンティブ、休日、裁量などで還元する。その順番の方が、お互いに公平でした。
コンサルの成功体験を、そのまま自店舗に持ち込んだ
私は現在も、コンサルティングで相手の話を聞き、丁寧に説明し、納得してもらいながら改善する方法で成果を出しています。
そこでは、外部の支援者と依頼者という立場が分かれ、お互いの役割を一定尊重した状態から始まります。
自店舗は違いました。経営者自身が、何をやり、何をやらないか、どこまでを仕事とするか、どの数字を追うかを、先に設計する必要があります。
私は「まず柔らかく始め、必要になったら後から基準を上げよう」と考えていました。
しかし、経営が苦しくなってから基準を変えると、経営者にとっては「改善」でも、従業員にとっては「後から条件を変えられた」と見えます。
丁寧に伝えることと、基準を曖昧にすることは別です。その違いを、私は自店舗では理解できていませんでした。
FCは失敗を防ぐ型である一方、小さく修正する自由も制限する
私は本来、「やってみる → 数字を見る → 変える → もう一度試す」というやり方を大切にしています。
FCには、ブランド、メニュー、価格、施術、販促、運営方法などの型があります。その型は、加盟者が同じ失敗をするのを防ぐ利点になります。
一方で、数字が合わなくなったときに、すぐに価格、メニュー、提案方法、広告などを自由に変えられるとは限りません。
問題は「FCは変えられないから悪い」ということではありません。自分は必ず仮説検証を繰り返して事業を改善するタイプなのに、その自由が小さいモデルを選んだことです。
事業モデルが自分の得意な経営方法と合うかも、加盟前に検証すべきでした。
もし2025年8月に戻れるなら――FCではなく、小さく始める
今、同じ案件を見せられても、私はFCには加盟しません。
そのかわり、自分でコントロールできる小さな事業として、需要と経済性を確認します。

たとえば、まず完成形の店舗を作るのではなく、時間貸しのスペースや間借り、小さな居抜き、既存店舗の譲渡、中古設備などを検討します。
提供するメニューも絞ります。広告費も小さくし、まず自分でお客さんの反応を確かめます。人が必要なら、最初から大人数を採用するのではなく、運営に必要な最小限の体制から始めます。
先に確かめるのは、次の数字です。
- その地域でお金を払うお客さんがいるか
- 一度来たお客さんが再来するか
- 無理な回数券販売に頼らず、単体で粗利が残るか
- お客さん1人を集める費用を回収できるか
- オーナー以外の人でも再現できるか
- メニュー、価格、提案、広告を小さく変えて検証できるか
反応が悪ければ、メニューや価格を変える。リピートされなければ、施術と提案を見直す。採算が合わなければ、そこで止める。
これを自分で繰り返し、うまくいく条件を確認してから、常設店舗、採用、広告、設備にお金を入れます。
FC本部の数字や撤退事例を調べることは必要です。ただし、それは「加盟先を選ぶため」ではなく、自分で始める事業の価格、集客、固定費、回収期間を設計するための比較材料として使います。
私が今取るのは、「もっと慎重にFCを選ぶ」という道ではありません。
FCには加盟せず、自分の手にGO/STOPと改善の権限を残したまま、小さく売る。
これが、今回の経験を経た私の結論です。
次の事業で守る10の原則
失敗を「いい勉強になった」で終わらせないために、次はこれを守ります。
- 動く前に、やる理由とやらない理由を同じ数だけ書く
- 提案者の成功事例だけでなく、撤退事例と平均値を確認する
- 資料の標準モデルではなく、自分の地域・家賃・人材・広告費で再計算する
- 集客数ではなく、粗利とキャッシュフローで判断する
- 採用前に、必要な仕事・数字・行動基準を明確にする
- 契約前に、家賃、初期費用、工事期間、解約条件を交渉する
- 契約、融資、採用、工事の前に、独立したGO/STOP判定を置く
- 最初から融資ありきにせず、失っても生き残れる金額から始める
- 小さく売って需要と粗利を確認し、再現性が見えてから資本を増やす
- ノウハウは借りても、最後の投資判断は他人に預けない
この10個のうち一つでも答えられないなら、お金を入れる段階ではありません。
まとめ:失敗は、開業後よりも「入口」で大きくなる
この店舗は、お客さんが来なかったから閉店したのではありません。
私が見落としたのは、
- 売上が提案力と回数券販売に強く依存すること
- 固定費を背負う前に需要を検証していなかったこと
- 加盟、物件、融資、契約、採用、工事を一本のレールに乗せたこと
- 採用前に必要な役割と基準を明確にしなかったこと
- 自分が得意とするPDCAを回しにくい型を選んだこと
です。
自分の失敗を振り返ると、経営は「開店してから頑張れば何とかなる」ものではありません。
最初に何を選び、いくらを賭け、どの条件で契約し、どこに止まるポイントを置くか。その段階で、すでに勝負の大きな部分は決まっています。
これから事業を始める人に、一つだけ伝えたいことがあります。
一度目の事業で完成形を作らないでください。
人を採る前に、自分で売る。長期契約の前に、短期で試す。設備を新品で揃える前に、借りるか中古を使う。融資で始める前に、自己資金で需要を確かめる。
反応があり、粗利が残り、他の人でも再現できると分かってから大きくする。
融資は、未検証の事業を始めるためではなく、成立を確認できた事業を拡大するために使う。
私はこの順番を逆にし、約1000万円規模の事業から始めました。
今度は、小さく始めます。
「いくら借りられるか」ではなく、「いくらなら失敗しても生き残れるか」から考えます。
「完成形を作ってから売る」のではなく、「小さく売れることを確かめてから作る」。
これが、約7か月の経営と閉店を経て、私がようやく得た結論です。
小さく始める具体的な方法は、ビジネスの始め方|失敗しない人がやっている「小さく始める」ヤドカリ商法で整理しています。この事業経験を含め、守り・攻め・運用のどこに位置づけるかは、資産3000万円へのロードマップで全体像をまとめています。

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