家を買うとき、価格、間取り、駅からの距離、学校、日当たりはよく確認します。
でも、そこで暮らす何十年もの安全と家計を左右するのが、その土地の災害リスクです。
同じ市内、同じ駅から徒歩10分でも、道路一本を挟んで浸水深や土砂災害リスクが変わることがあります。購入後に気づいても、家は簡単に移動できません。
結論からいうと、家を買う前に最低限見るべきなのは次の5種類です。
- 洪水
- 内水氾濫
- 土砂災害
- 津波
- 地震の揺れやすさ・地盤
国土交通省のハザードマップポータルサイトと、防災科学技術研究所のJ-SHISを使えば、多くの情報を無料で確認できます。
この記事では、地図の色を見るだけで終わらず、家を買うか、価格へどう織り込むか、火災保険をどう選ぶかまで解説します。
※ハザードマップは想定に基づく情報で、色がない場所の安全を保証するものではありません。掲載情報や区域は更新されます。購入前には自治体の最新資料、重要事項説明、現地の地形も確認してください。
まずは「重ねる」と「わがまち」の両方を見る

国のハザードマップポータルには、主に2つの入口があります。
- 重ねるハザードマップ:全国の洪水・土砂災害・高潮・津波などを同じ地図へ重ねて確認
- わがまちハザードマップ:市区町村が作成した最新の地域版ハザードマップを探す
最初に「重ねる」で候補地を横断比較し、購入候補が絞れたら「わがまち」で避難所、避難経路、地域独自の情報を確認するのがおすすめです。
住所検索だけでなく、地図を拡大して敷地、接する道路、最寄り避難所までの経路を見てください。
1. 洪水ハザードマップ|川があふれたときの浸水深を見る
洪水ハザードマップは、大雨によって河川が氾濫した場合の浸水想定区域と浸水深を示します。
確認するのは、色が付いているかだけではありません。
- 想定浸水深は何mか
- 浸水が続く時間はどれくらいか
- 家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていないか
- 近くの川だけでなく、上流や大きな河川の影響がないか
- 避難所まで冠水しやすい道を通らないか
たとえば同じ浸水想定区域でも、0.5m未満と3m以上では対策が変わります。1階の床高、電気設備の位置、駐車場、垂直避難できる階数まで考えましょう。
色が付いていたら絶対に買わない?
私は、同じ価格・同じ条件なら、浸水リスクが低い土地を優先します。
ただし都市部では、リスクがまったくない土地だけに絞ると選択肢が極端に減ることがあります。その場合は、
- 価格にリスクが織り込まれているか
- 2階以上へ避難できるか
- 電気設備を高い位置へ置けるか
- 水災補償を付けた場合の保険料はいくらか
- 売却時にも同じリスクを買主から見られることを受け入れられるか
まで含めて判断します。
2. 内水ハザードマップ|川から遠くても安心ではない
内水氾濫は、大雨を下水道や排水路で処理しきれず、街中に水があふれる災害です。河川の氾濫を示す洪水とは原因が違います。
そのため、川から離れていて洪水ハザードに色がなくても、低地、くぼ地、アンダーパス周辺では浸水する可能性があります。
確認するポイントは次のとおりです。
- 自治体が内水ハザードマップを公開しているか
- 過去の浸水実績がないか
- 前面道路や敷地が周囲より低くないか
- 地下室、半地下、地下駐車場がないか
- 雨水ますや側溝の位置・状態
内水情報は「重ねる」に未掲載の地域もあるため、必ず自治体版も探してください。現地は晴れの日だけでなく、可能なら雨の日にも見ると水の流れが分かります。
3. 土砂災害ハザードマップ|がけ・谷・造成地を確認
土砂災害では、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)と土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)を確認します。
特にレッドゾーンは、建物へ損壊が生じ、住民へ著しい危害が及ぶおそれがある区域です。建築物の構造規制や開発行為の制限なども関係します。
地図では次を確認してください。
- 敷地が区域内に入っていないか
- 敷地の一部だけでも区域にかかっていないか
- 裏山、擁壁、急傾斜地、谷筋がないか
- 避難路が土砂災害区域を通らないか
- 擁壁の所有者、検査済証、補修履歴
区域の線ぎりぎりだから安全とは限りません。地図の縮尺や更新時期を確認し、気になる斜面や擁壁があれば、自治体窓口や専門家へ確認しましょう。
4. 津波ハザードマップ|海からの距離より標高と経路
津波は「海から何km離れているか」だけでは判断できません。川を遡上したり、低地へ入り込んだりするためです。
見るポイントは、
- 津波浸水想定区域と浸水深
- 津波の到達想定時間
- 敷地の標高
- 高台や津波避難ビルまでの距離
- 徒歩で安全に避難できる経路
- 川、橋、踏切、ブロック塀などの障害
です。
地震直後は車が使えるとは限りません。子ども、高齢者、ペットと一緒に徒歩で避難できるか、実際に歩いて確認するのが大切です。
海沿いでは高潮ハザードもあわせて確認してください。津波と高潮は原因が異なり、想定区域も同じとは限りません。
5. 地震ハザード|震度だけでなく地盤を見る
洪水や津波とは別に、地震の揺れやすさも確認します。
J-SHIS 地震ハザードステーションでは、住所や地点を検索し、今後一定期間に強い揺れに見舞われる確率、表層地盤、主要な活断層などを確認できます。
初心者はまず、
- 今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率
- 表層地盤の揺れやすさ
- 周辺の活断層
- 自治体の液状化ハザードマップ
を見れば十分です。
J-SHISの確率は「その期間中に必ず起きる」という予言ではありません。複数の地震の発生可能性と揺れをまとめた評価です。確率が低く見えても地震が起きない保証ではありません。
建物の耐震性もセットで見る
土地の揺れやすさだけでなく、建物側も確認します。
- 建築年と適用された耐震基準
- 耐震等級
- 木造・鉄骨・鉄筋コンクリートなどの構造
- 地盤調査結果と地盤改良の有無
- 中古住宅なら耐震診断、修繕履歴
地震保険の割引にも、免震建築物、耐震等級、建築年などが関係します。
家選びでは「敷地だけ」でなく生活圏を見る

自宅が無事でも、周辺が浸水・土砂災害で孤立すれば生活は止まります。候補地から次の場所まで経路を追いましょう。
- 避難所・高台
- 駅・職場
- 学校・保育園
- 病院
- スーパー
- 家族が日中過ごす場所
昼と夜、平日と休日では家族の居場所が違います。「家にいるとき」だけでなく、家族が別々の場所にいるときの連絡方法と集合場所も決めておくと安心です。
ハザード情報を購入判断へ反映する5ステップ

1. 候補地を複数並べる
1件だけを見ると判断が甘くなります。同じ予算帯で2〜3件を地図へ並べ、災害リスクを比較します。
2. 5種類を重ねて確認する
洪水だけ安全でも、内水・土砂・地震リスクが高いことがあります。1種類だけで決めないでください。
3. 自治体版と過去の被害を確認する
国の地図に加え、自治体の最新資料、過去の浸水実績、地域防災計画を確認します。
4. 現地を歩く
坂、擁壁、川、側溝、前面道路の高さ、避難経路を見ます。地図では分からない高低差が見つかります。
5. 価格・保険・売却まで考える
災害リスクがある土地は、対策費、保険料、将来売るときの評価にも影響します。価格が安い理由を確認し、総額で判断します。
火災保険の水災補償へどう反映する?
洪水・内水・土砂災害の確認結果は、火災保険の水災補償を考える材料になります。
ただし、地図に色がないだけで水災補償を外すのは早計です。過去の浸水実績、周辺の高低差、自治体の地図、建物の階数なども確認してください。
すでに家を持っている人は、ハザード情報と現在の保険証券を並べると、必要な補償と不要な特約を整理しやすくなります。
▶ 関連:家の保険料、払いすぎてない?火災保険は見直し、地震保険は本当に必要か考えよう
購入前チェックリスト
- [ ] 重ねるハザードマップで5種類を確認した
- [ ] 自治体の「わがまちハザードマップ」を確認した
- [ ] 浸水深と浸水継続時間を確認した
- [ ] 内水と過去の浸水実績を確認した
- [ ] 土砂災害区域、擁壁、斜面を確認した
- [ ] 津波・高潮の避難先と到達経路を歩いた
- [ ] J-SHISと液状化マップを確認した
- [ ] 建物の耐震性・地盤調査を確認した
- [ ] 自宅から避難所、学校、職場までの経路を確認した
- [ ] リスクを価格、対策費、保険料、売却へ織り込んだ
まとめ:ハザードマップは家選びの必須資料
家族で決める見送り条件
候補を見る前に「浸水深○m以上」「避難所まで歩けない」「唯一の避難路が危険」「擁壁や境界を確認できない」など、見送る条件を決めます。条件に該当しても買うなら、価格差だけでなく保険料、止水・地盤対策、避難、将来売却まで含めて理由を書きます。
今日やることは、候補地を国と自治体の地図で開き、洪水・内水・土砂・津波・地震を○・△・×で記録することです。
家を買う前に見るべきなのは、洪水・内水・土砂災害・津波・地震の5種類です。
色が付いているから即NG、色がないから絶対安全、ではありません。大切なのは、想定される被害の大きさ、避難のしやすさ、対策費、保険料まで理解して、その価格で買うか判断することです。
間取りは直せます。設備も交換できます。しかし、土地の高さや周囲の地形は簡単に変えられません。
候補地を気に入ったときこそ、一度立ち止まって5種類の地図を確認してください。買う前の30分が、その後何十年の安心と家計を守ります。
区域や地図は更新されるため、購入前に国・自治体の最新情報をご確認ください。


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